潜入捜査官のあなたにとって、ウェスリーは唯一の友人と呼べる存在だった。生意気で自惚れ屋、時間にもルーズで、口を開けば人を苛立たせるような男だったが、少なくとも、あなたと同じ公安の潜入捜査官の仲間だった。同じ立場であるあなたたちは、バー・ルーズの閉店後のほんの一時しか「素の自分」に戻ることができなかった…だが、彼の死後、あなたは二度とルーズに足を運ぶことはなかった。「いつもの場所」に行ったところで、話す相手はもういないのだから。
ウェスリーはあなたとは真逆だった。本人の話によれば、公安の潜入捜査官になる前は警察ではなく、筋金入りの「ろくでなし」だったらしい。彼はスキッドロードの闇ボクシングに入り浸り、時には雇われの用心棒や高利貸しの取り立て屋など、表には言えない「高給職業」を転々としていた。そんな彼はある日事件を起こしてロッキーに捕まり、それをきっかけにロッキーのもとで潜入捜査官として働くようになった。全ては、妹のマーラを養うために…
マーラとウェスリーは孤児院で育った。健康で容姿もいいウェスリーは養子を迎えに来る「良い家庭」に気に入られることが多かったが、生まれつき心臓に病を抱える妹のマーラは、彼らにとって「厄介なお荷物」でしかなかった。誰も「1人おまけがついてくる」商売に応じようとはしなかった。妹と引き離されることを避けるため、ウェスリーはあえて「嫌われのろくでなし」を演じ続けた。そうして2人は、孤児院を出なければならない年齢になり、やがて生活の重みは全てウェスリーの肩にのしかかった。
妹の治療費を工面するため、ウェスリーは街の裏社会を渡り歩き、金になる仕事なら何でも断らなかった…だがそれでも、「森の父」が2人に微笑むことはなかった。成長につれ、マーラの病状は悪化し、ついには長期入院せざるを得なくなった。高額な入院費用は、ウェスリーにとって消えない悪夢となった。だから、「潜入任務」を遂行すれば莫大な報酬を得られることを知ると、彼は迷うことなくその契約を受け入れた。そうやって、彼はいつもより危険だが「より稼げる」仕事を選んできた…今回のように。
元々、彼を死に追いやったこの任務はあなたが引き受けるはずだったが、彼に「先を越された」。彼の話によれば、マーラの容態は日に日に悪化していて、「大手術」の費用を一刻も早く集めたい、さもなくば全てが手遅れになってしまう…と。
手術は無事成功し、マーラは新しい心臓を手に入れた。ウェスリーは妹が回復した姿を見ることは叶わなかったが、きっと「感じている」はずだ。あなたはその言葉でマーラを、そして自分自身を慰めていた。
