その攻撃性を象徴するような半月形の角と大きな鼻孔を持つ、怒りっぽいスイギュウ。刑務所には長いようで、受刑者同士の言葉遣いに一家言を持っている。いつ「地雷」を踏んでしまうか分からないから、彼と会話する際は細心な注意を払う必要がある。
路上で育ったビルには、リンカーンという弟がいる。早くから学校をやめギャングに入ったふたりは、ずっと使いっぱしりのような簡単な仕事をしていた。そんなある日、ギャングのボスはある汚点証人を抹殺するため、子分らにくじ引きをさせた。その結果、未成年だったリンカーンが運悪く、この殺しの実行者に選ばれてしまった。
リンカーンをギャングに引き入れたのはビルだった。自分のせいで、将来を台無しにされようとしてるリンカーンを黙って見ているわけにはいかない。そのため、ビルは行動開始前に、ボスから預けられていた銃を奪い、リンカーンの代わりに任務に赴いた。
銃を使ったことのないビルでは、当然ながらターゲットの排除などできるわけがなかった。彼の銃弾は証人の頭上をかすっただけで、それなのに司法警察から銃弾3発食らうという大きすぎる代償を払った。証人が無事法廷に出たことで、ビルがいたギャングは一挙に壊滅させられた。その後、証人殺害を企てたビルはその余生を刑務所で過ごすこととなり、弟のリンカーンは地域の助けを受け、学校に戻ることになった。
あっという間に10年が経ち、リンカーンは優秀な成績を収め、かつてビルにもよく話していた夢の名門大学への入学を許可された。弟が幼い頃の呪縛から解き放たれ、明るい未来へ向かおうとしてる姿を見て、ビルも兄として心から嬉しく思っている。リンカーンの運命がこうして変われるなら、刑務所でどれほどの辛酸を舐めても構わないと、ビルはいつも自分に言い聞かせている…