いつもよだれダラダラのアルパカ。重度な薬物依存により、精神が錯乱している。真昼間から幻覚を見るのも日常茶飯事で、よく現れる「お友達」は裸の妖精とロブスター騎士団。刑務所に入る前はコック見習いをしていたが、鍋に蹄を突っ込まずに料理できるのは正気の間だけだった…
ディエーゴは幼い頃から不運な子だった。父親はなんの取り柄もない飲んだくれのため、母親は彼がまだ乳飲み子だった頃に、家の金を持って他の男と駆け落ちした。ディエーゴが4歳の頃、父親もバーのトイレで溺死するという驚くに値しない最期を迎えた。14歳になる頃、すでに10年も孤児院で過ごしてきたディエーゴは、年齢と食事量が上がりすぎた事を理由に追い出されてしまった。院長は別れ際にディエーゴに一通の紹介状を渡した。自分の遠い親戚が経営するレストラン「グッドデー」で、見習いとして働くように、と。
コック見習いの仕事はキツく、給料も微々たるものだが、それでもディエーゴはその場所を気に入っていた。なぜなら、自分のそのくそったれな生活にようやく光が差した気がしたからだ。しかし悲劇の車輪は慣性に導かれるがごとく、またしても彼に襲いかかった。レストラン「グッドデー」のキッチンで原因不明な大火事が発生し、哀れなディエーゴはお尻を焼かれてしまったのだ。ひどい火傷に苦しむディエーゴをよそに、店長は彼が正式な見習いでないことを理由に、医療費さえ貸してくれなかった。かわいそうなディエーゴは、安価な痛み止めと強靭な生命力で痛みに抗うしかなかった。数カ月後、怪我が治る頃には、ディエーゴも重度な薬物依存症を患ってしまっていた。
ドラッグをやめようとしたこともあったが、すぐに諦めた。金を手に入れるため、ディエーゴは盗みを働くようになり、ついにはストリートギャングにまで入った。ドラッグのせいでいつも意識が混沌としているため、ギャングに何年もいた割に、最底辺の仕事しか任せられなかった。もっとも、最底辺の仕事でも、失敗は付き物だった。今回刑務所に入れられたのも、禁制品を運ぶ任務中に見破られた結果だが、任務の詳しい内容は、もはや忘却の彼方にある。
それからディエーゴはいつも自分の彼女キャサリンのことを話しているが、この彼女も彼が見た幻影の1つに過ぎない。似たような「お友達」は、彼の脳内に少なくとも数十名はいるはずだ…