長く鋭い爪を持ったアリクイ。刑務所に入る前は外科医をしていた。医療経験があるため、特別に刑務所医務室で働いている。その利便性から、医務室にある「いい物」が簡単に手に入る。ちゃんとした薬や、医療用アルコールが必要になったら、彼に頼むといいだろう…
フェルナンドはもともと都市中央病院の担当外科医で、長いキャリアの中で数え切れない患者を救ってきた。数年前に妻と不仲になり離婚したが、それでも毎週ふたりの子供と面会することができた。家族を失ったことで、フェルナンドはますます仕事に打ち込むようになり、まもなくして外科主任候補のひとりになった。しかしちょうどその頃、フェルナンドが病院の麻酔薬を無断で持ち出したことがバレ、そのまま解雇され医師免許を剥奪された。
盗みを働いたのは、手のかかる弟アレンのためだった。フェルナンドと違って、アレンは早くに学校を辞めた後、外でろくでもない者たちとつるみ始め、そしてついにギャングに入った。ある深夜、長らく連絡してこなかったアレンが、唐突にフェルナンドを訪ねてきた。しかも、銃弾を2発打ち込まれた状態で。どうやらギャング同士のドンパチでケガをしてしまったが、普通の病院に行くわけにもいかず、兄のフェルナンドを頼ってきたようだ。
フェルナンドもこの弟のことは好きではないが、それでも家族には違いない。少し迷ったすえ、自宅でアレンを手当てすることにした。そして前述の麻酔薬の無断持ち出しに繋がる…
医師免許を失ったことで、フェルナンドは収入源をなくしてしまい、高額の住宅ローンと子供の養育費に押しつぶされそうになっていた。責任を感じたのか、それとも自分の都合のためか、アレンは再びフェルナンドを訪ね、ギャング向けの闇診療所を開くという、新しい事業を提案した。「命を救けることに違いはない。犯罪者の命だって大事だろ?」アレンはそう言って、彼を説得した。他に道のなかったフェルナンドは、結局アレンの提案に了承し、闇医者になった。
最初の二年間は、闇診療所のお陰で収入が増え、フェルナンドもだんだんそんなグレイゾーンでの生活に慣れていった。そんなある日、テレビを見ていると、ある強盗が小さな銀行を襲撃し、ふたりの警備員を殺した後、100万ドルの現金を奪い、ケガを負って逃走中とのニュースが流れた。警察が公開した容疑者写真を見ると、驚くことにそれはフェルナンドがかつて救けた者だった。自分の医術のせいで、罪なき警備員がふたり殺されたかも知れないと気付いたフェルナンドを、目まいと吐き気が襲った。
そういう運命だったのか、フェルナンドが自責に苛まれていると、診療所のベルが鳴った。逃亡中の強盗犯がバッグから札束を2つ取り出し、フェルナンドにもう一度治療してくれと命じた。少し迷った後、フェルナンドは言われた通りにした。ただし今回は「うっかり」麻酔薬を使いすぎてしまっただけで…その強盗犯は二度と手術台から起き上がることはなかった。
自分なりの「罪滅ぼし」を済ませたフェルナンドは、アレンに死体の処理を頼んだ。しかし診療所へ戻ると、強盗犯が持ってきた金はアレンに持ち去られてしまっていた。後のことは言わなくとも分かるだろう。考えなしのアレンはすぐさまボロを出し、警察に捕まった。そしてこの「かわいい弟」は、まもなくしてフェルナンドのことまで白状してしまった。
刑務所に入ったフェルナンドは、ふたりの子供の養育費を払えなくなったため、一時的に親権を失ってしまった。子供たちを諦めきれず、フェルナンドはまたしても医療用品を盗み出し転売し始めたのである。思えば、フェルナンドの悲劇はそこから始まり、また最初に戻ってしまった…