刑務所でのマジックショーを計画している、自称マジシャンのウサギ。様々なバックグラウンドを持つ受刑者たちを惹きつけるには、小手先のトリックでは物足りないため、「とっておき」のマジックを披露するつもりだ。その計画には興味を惹かれるが、まさか助手に誘われるとは思わかなった。「デス・スライス」のようなマジックに参加する勇気は、果たしてあるだろうか?
由緒あるマジシャンの一族に生まれたホワイトは、祖父も父も優れたマジシャンだった。なにより、ホワイト自身も若くしてかの有名な「トップハット一座」のチーフマジシャンに上り詰めるほど、他の追随を許さない腕前を持っていた。もっとも、今となってはすべて過去の話となってしまったが…
ホワイトの運命の分かれ目は、巡演100回目の時だった。その夜、彼はいつものように独創的な看板マジック「デス・スライス」で観客たちを湧き立たせた。ショーは成功裏に終わり、その後は盛大な打ち上げが催された。酔いつぶれたホワイトは、そのままアシスタントの美女と熱い一夜を過ごした…
だがその2日後、あるテレビ番組を見たホワイトは驚きのあまり、声を失ってしまった。それは「種明かし名人」を名乗る覆面野郎が、数々の名マジックの種明かしショーを行うという番組だった。中にはホワイトご自慢の「デス・スライス」も入っていた!それを見た瞬間、激しい目まいがホワイトを襲った。なぜなら種明かしされたマジックは、価値のないものになってしまうと、誰よりも知っていたからだ。
こうなった以上、ホワイトは座長の指示の元、新しいマジックを考えるしかなかったが、とてもそんな気分にはなれなかった。自分の「秘密」がなぜ暴かれたのか、気になって仕方がなかったからだ!「デス・スライス」に欠陥などない、であれば誰かが自分のノートを盗み見たからに違いない。そして容疑者はただひとり、自分のアシスタントだ。
ホワイトはアシスタントを呼び出し、警察に通報すると脅すと、ひどく怯えたアシスタントは、すぐに認めた。なんでも外で作った借金を返すため、あの夜ホワイトのノートを盗み見たという。そしてその秘密を買い取ったのは、数年前ホワイトにチーフマジシャンの座を奪われた「ペンギンのオズワルド」だった。まさかオズワルドがホワイトに復讐するため、「種明かし名人」などというふざけた真似をするとは、彼女も予想していなかったのだ。
「これはマジックへの背信行為だ。必ず代価を払わせてやる!」真相を知ったホワイトは、その真っ赤の両目から火を吹き出さんばかりに怒りに燃えた。
そして数日後、ホワイトは素知らぬ顔でオズワルドを誘い出し、マジックの種を明かされ大変な目に遭ってしまったと泣きついた。それを見たオズワルドは、チーフマジシャンの座を自分に譲れば、アシスタントの席を「約束してやる」とホワイトの説得を試みた。そんな算段を立てていると、ひどい目まいがオズワルドを襲った。ホワイトがその酒に一服を盛ったのである…
目が覚めると、オズワルドはマジックボックスに拘束されていた。そして今から行われるのは、まさに「デス・スライス」だ!このマジックは先日改良しておいたから、「種明かし名人」であるオズワルドにはぜひテレビで見せたような「聡明さ」を発揮し、種を明かしてほしいと、ホワイトは笑いながら説明した。制限時間は10分しかないが、解けなければ刃がそのまま落ちる!
そばで見ていたアシスタントは、その恐ろしい報復にすっかり怯えてしまい、慌てて警察署に通報した。しかし、警察が駆けつけた頃にはすでに30分が過ぎ、哀れなオズワルドがそれまで待てるはずもなかった…